大分県内教育機関におけるコンピュータネットワークの活用
ハイパーネットワーク社会研究所 研究員 渡辺律子
1.はじめに
大分県「学校教育情報ネットワーク」は、各種サーバ等を大分県データセンター内に増設し、新たなシステムとして平成15年4月から再稼動する。
本稿では、学校教育情報ネットワークの現状と新規に構築された「コミュニケーション(グループウェア)」「教育素材コンテンツ」サーバについて概説し、さらに課題を述べる。
2.大分県学校教育情報ネットワーク
大分県学校教育情報ネットワークは、県内学校の教育活動の活性化や学校間の情報交換、情報の共有化などを図ることを目的に構築された、大分県独自の教育専用ネットワークである。県教育センターを拠点とし、県下全ての公立学校がこの拠点を経由してインターネットに接続できるよう平成12年度から運用が開始された。県内3箇所にアクセスポイントを設け各学校からダイヤルアップで接続していたが、「豊の国ハイパーネットワーク」が構築された地域ごとに常時接続での利用が可能になる。
現在の各学校と学校教育情報ネットワークシステムの利用形態を以下に示す(図1参照)。
①各学校から、直接又は広域イーサネットサービスや既存のCATV網を介して、豊の国ハイパーネットワークを利用し、各種サービスを使用する。
②豊の国ハイパーネットワークにまだ繋がっていない市町村の小中学校は、ISDN回線を使ってダイヤルアップでサーバに接続する。
③通常はデータセンターからバックボーンを介してインターネットに接続するが、一部の学校は、広域イーサネットサービスやCATV網から直接インターネットに接続している(学校教育ネットワークシステムの各種サーバは利用しない)。
3.学校教育情報ネットワークシステムの機能
大分県学校教育情報ネットワークシステムを利用するために、教育センターからIDやメールアドレスが県下公立学校・教育機関の教職員と児童生徒に配付される予定。
データセンター内に設置された各種サーバ群[ファイアウォール、フィルタリング、ウイルスチェック、WWW、Mail、コミュニケーション(グループウェア)、教育素材コンテンツなど、図1参照]の機能は、学校教育情報ネットワークを介して利用可能である。本稿では、特に今回新規に構築された「コミュニケーション(グループウェア)」と「教育素材コンテンツ」の各サーバの機能について説明する。
4.コミュニケーション(グループウェア)サーバの機能
教育用グループウェアとは、職場や学校内のネットワーク(LAN)を活用してグループ間で情報の共有やコミュニケーションを効率的に行い、グループによる協調作業(協同して情報化した教育を行う)を支援するコンピュータシステムのことをいう。これにより県内小・中・高等学校や教育委員会の枠を超えて、教育機関内での情報交換が促進されることが期待される。
学校用のグループウェアソフトはすでに各種市販のものがあるが、今回はNEC『学びの扉』が採用された。大分県全体の学校で利用できるよう構築され、インターネットエクスプローラなどのWWWブラウザを使って利用する。主な機能には、メッセージ、掲示板、Webメール、電子会議室、アンケート、施設予約、行事カレンダーなどがある。
学校現場でこれまでFAXを使ってやりとりされていた事務文書なども、このコミュニケーション(グループウェア)サーバの機能を使ってやりとりされることが考えられる。
5.教育素材コンテンツサーバの機能
先生や生徒が利用する教育素材コンテンツ(文章、画像、映像、音声、音楽などの情報)を県下の学校で共有することを目的に、データベース化を行った。このソフトウェアには、NEC『学びの扉コンテンツデータベース』が採用された。「キーワード検索」もしくは「分類検索(学年や教科ごと)」により、必要な素材を探すことができる。先生や生徒が作成したコンテンツを登録することも可能である。
既存のコンテンツとして、無料で配布されている動画コンテンツ11,000点(コンピュータ教育開発センター)1と新たに購入した静止画の教育素材コンテンツ9,400点(株式会社東大英数理教室)が用意されている。コンテンツの登録には国際的に標準化が進められている学習オブジェクトメタデータ(LOM)2を利用し、検索しやすいデータベースの構築を目指している。
6.検討点
これらの「コミュニケーション(グループウェア)」「教育素材コンテンツ」サーバの使い勝手は、教育委員会や学校現場の先生、学識経験者等からなる委員会で検討された。今後の主な検討点を次に示す。
<コミュニケーション(グループウェア)サーバの機能>
・名称や機能が利用者の立場(学習者の発達段階)に合わせて、見やすく分かりやすいものであること。
・具体的な利用に合わせて管理方法や利用方法を検討していくこと。
<教育素材コンテンツサーバの機能>
・検索結果の表示方法や、ファイルのダウンロード方法が分かりやすいこと。
・蓄積された情報がより効率よく利用できるようなものであること。利用者ごとの利用履歴(検索キーワードなど)をもとに、検索時に利用頻度の高いコンテンツから順に表示されるなど。
・全体の検索状況を利用者にフィードバックする(使用頻度の高いキーワード上位を表示するなど)。
7.まとめ
県内学校間の情報交流を促進するシステムとしての期待から、「学校教育情報ネットワーク」は今後さらに、「利用時のガイドライン作成」、「利用方法等研修会の開催」、「効果的な活用方法の検討の場」、「地域素材(地域の自然、工業、伝統文化、歴史など)のディジタル化と蓄積」、「盲・聾・養護学校で利用するコンテンツの充実」、「情報モラルの徹底」などを、継続して検討する場の必要性を感じる。そのためにも、先ずは本システムが教育現場で活用されることを強く望む。
(注)
1 コンピュータ教育開発センター http://www.cec.or.jp/CEC/
2 学習オブジェクト・メタデータ:LOM(Leaning Object Metadata)
個々のコンテンツにつける統一的な形式の属性。タイトル、概要、キーワード、教育分野、 分類、学年、利用者、利用年限、権利説明、ファイル形式、ファイルサイズ、再生時間、
内容のまとまり、製作者、URL、言語などの項目を用いる。
※本内容は、HYPER FLASH27号に掲載しています。